プロテオグリカン。弘前大学発の技術が人々の生活を改善!

【プロテオグリカン】弘前大学発の技術が人々の生活を改善!

みなさんは「プロテオグリカン」という成分をご存知ですか?プロテオグリカンは、コラーゲンやヒアルロン酸とともに、人間の体の働きに大きく関係している生体成分の一つです。

世界でもこの成分を実用化することが待ち望まれていましたが、先ごろ日本の弘前大学の研究により、さまざまな分野で応用することが可能となりました。

技術開発の経緯・特徴等などをふまえながら、プロテオグリカンの応用でいかに私たちの生活がより良いものになるのか。弘前大学の研究にもスポットを当てながら、一緒に見ていくことにしましょう!

プロテオグリカンは軟骨を構成する3大成分の1つ

プロテオグリカンは、コラーゲン・ヒアルロン酸とともに「細胞外マトリックス」を形成する第3の生体成分として知られています。細胞外マトリックスとは、細胞の外側に蓄積されている成分の総称で、細胞の増殖や分化に欠かせない成分です。

この3つは「軟骨を構成する3大成分」とも呼ばれており、関節の健康をサポートする成分として、世界中の研究者から注目されてきました。

プロテオグリカンの効能

なかでも、プロテオグリカンの効能はとくに注目度が高いことで知られています。

プロテオグリカンの特徴して、水親和性が高い点が挙げられるでしょう。水親和性とは、どれだけ水と結びつきやすいか・水に溶けやすいかを意味する言葉。

プロテオグリカンは、糖の持つ水親和性により、多量の水を保持できる性質を持っているので、保湿性に優れています。保湿性が高いということは、それだけ細胞の中に水分を溜めておきやすいということ。お肌の潤いアップや乾燥の防止にはうってつけです。保湿性の高さは、美容成分としても有名な「ヒアルロン酸の値を上回る」という事実からも伺えるでしょう。

また、保湿という効能以外にも緩衝剤としての役割も果たしています。つまりは、クッション性に優れているということですね。クッション性が高ければ、関節の激しい動きにもしっかり対応することが可能です。

もちろん、先ほども触れたように、細胞の増殖、分化、形質発現の制御に重要な役割を担っていることも確認されており、体の新陳代謝や細胞の再生能力の促進の効能も有していると言われています。

プロテオグリカンが応用化、実用化へ

長い間、プロテオグリカンを応用・実用化しようにも、従来の生成方法では限界がありました。

これまでプロテオグリカンの生成は、牛・豚の気管軟骨等から抽出を図ってきました。しかしこの方法では極微量のプロテオグリカンしか抽出できず、1g当たり3,000万円という莫大なコストがかかっていました。これではとても実用化に適したものとは言えません。

さらに、BSE、口蹄疫、狂牛病といった問題や、生成過程で人体に毒性・有害性のある薬品を使用していたことも加わり、応用化の面でも困難の伴う成分とされてきました。

弘前大学、高垣教授の柔軟な発想

この状況を打開したのが、弘前大学の高垣啓一教授です。

弘前大学は、従来から国内有数の糖鎖工学研究実績を有する国立大学でした。同大学の高垣教授は、水産加工品の製造過程で廃棄されることが多い、鮭の頭部からプロテオグリカンが抽出できないかと思いつきました。

同教授は、鮭の鼻軟骨を粉砕し脱脂処理の上、溶媒抽出などを用いてプロテオグリカンを抽出することに成功。しかし、未だ抽出にクロロホルム等の有害な試薬を使用していたため、人を対象とした研究に用いるには適切とは言えませんでした。

そのような中、東北/北海道の郷土料理である「氷頭(ひず)なます」から発想を得た高垣教授は、酢酸によって鮭の軟骨からプロテオグリカンを抽出するアイデアを思いつきます。

この方法をベースに、弘前大学と株式会社角弘の共同研究により、世界で初めて、プロテオグリカンの高収率、高純度の精製が成功することとなったのです。

プロテオグリカンの応用・実用化に大きな功績を残した弘前大学の高垣教授でしたが、2006年夏、53歳の若さで惜しまれながらこの世を去りました。

この日本の誇る偉大な才能の研究成果があったからこそ、私たちは現在に続くプロテオグリカンの恩恵を受けることができると言えるでしょう。

鮭鼻軟骨由来のプロテオグリカンの特徴

さて、弘前大学で進められた研究には、どのような特徴があったのでしょうか?

まずは、大量生産が可能となったことから、従来の牛・豚由来のものと比べ、100分の1の低コスト化が実現しました。さらに、原材料が牛・豚等から鮭に代わり、抽出・精製に用いられる溶媒が、有害薬品から酢酸とアルコールへと変わったことも大きな進歩の一つです。

抽出・生成に有害薬品を使用しないことで、安心してプロテオグリカンを摂取できるようになった点は、人体に関わる研究分野への応用を一気に加速させました。

プロテオグリカンの応用・実用化

弘前大学の研究をベースとして、プロテオグリカンの応用・実用化は進化を続けています。

現在プロテオグリカンは、生産コストの低減と、高い安全性が確保されたことにより、さまざまな分野で応用化・実用化が可能となりました。

擦り減った軟骨の補完、軟骨細胞の再生への効能性など、プロテオグリカンは、変形性関節症等の「ロコモ対策」に有効と言えます。すでに機能性食品、医薬品、医療用素材という形で応用化が図られており、今後もさらなる進展が期待されます。

また、群を抜いた保水性、加齢とともに減少する新陳代謝力を上げる効能など、特に肌のエイジング対策として注目されている点も特筆すべきポイント。「化粧品」という形でプロテオグリカンは実用化が進み、将来性も大きく期待されています。

このほかにも、炎症性腸疾患の治癒効果、ヒト血小板造血促進作用、免疫調整機能など、さまざまな効能が確認されており、機能性食品や医薬品といった形で、人々の健康をサポートする為の応用化・実用化が進んでいます。

ますます注目される生体成分―プロテオグリカン

日本の弘前大学発の技術的ブレークスルーにより、さまざまな分野での応用化が図られているプロテオグリカン。これから深刻化する高齢化社会を考えた場合、健康・医療・アンチエイジング(美容)分野で、ますますの活用が予想されます。

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